ブックタイトルDental Products News 特別号Vol.9

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概要

Dental Products News 特別号Vol.9

エピジェネティクスって何?大阪大学大学院・医学系研究科・病理学教授医師仲野徹昭和32年大阪生まれ。昭和56年大阪大学医学部医学科を卒業の後、3年間内科医として勤務。京都大学医学部(本庶研究室)助手・講師、大阪大学微生物研究所教授などを経て、平成16年から現職。DNA01エピジェネティック・ランドスケープ全能性細胞DNA02エピジェネティクスのたとえConrad Waddington A B C太郎は花子が好き花子は太郎がきらい太郎と次郎は友だち太郎は花子が好き花子は太郎がきらい太郎と次郎は友だち太郎は花子が好き花子は太郎がきらい太郎と次郎は友だち太郎は花子が好き花子は太郎がきらい太郎と次郎は友だち花子は次郎が好き花子は次郎が好き花子は次郎が好き花子は次郎が好き次郎と花子は結婚した次郎と花子は結婚した次郎と花子は結婚した次郎と花子は結婚した太郎は花子にふられた太郎は花子にふられた太郎は花子にふられた太郎は花子にふられた太郎と次郎は喧嘩した太郎と次郎は喧嘩した太郎と次郎は喧嘩した太郎と次郎は喧嘩した次郎は太郎をなぐさめた次郎は太郎をなぐさめた次郎は太郎をなぐさめた次郎は太郎をなぐさめた筋肉細胞血液細胞神経細胞全能性細胞は、「何にでもなれる細胞」。その細胞が坂道を転げ落ちた先によって「筋肉細胞」「血液細胞」「神経細胞」などへと決定していく。この転げ落ちるメカニズムがエピジェネティックス。「エピジェネティックスな特性とはDNAの塩基配列の変化をともなわずに染色体における変化によって生じる、安定的に受け継がれうる表現型である」と定義されている。活性的付箋=読み取る抑制的付箋=読まない伏せ字=読めないヒストンのアセチル化ヒストンの抑制的メチル化DNAのメチル化ヒストンの活性的メチル化読み取れる内容=細胞の分化状態ゲノムのレベルでは全遺伝子情報を持っているが、エピジェネティクスによる細胞によって、読み取れる内容=細胞の分化の状態が異なっている。A「太郎は花子が好きだが、花子に振られ、ともだちの次郎がなぐさめる」B「太郎は花子が好きだったが、花子は太郎がきらいで、好きだった次郎と結婚、太郎と次郎が喧嘩した」C「太郎と次郎は友達だったが、喧嘩した」元々は同じ要素を持っていても、読み取る・読み取らない・読めない場所によって、内容や印象が大きく変わることを理解いただけるでしょう。この読み取る・読み取らない・読めない場所の決定こそがエピジェネティックスである。DNA03遺伝と環境+エピジェネティクスEpigenetics遺伝=氏GeneticsEnvironmentDNA04生後0~1週間可愛がられたラットはストレスに強い新生仔期の「かわいがられ方」とストレス反応視床下部―下垂体―副腎系かわいがられるフィードバック機構による?ステロイドホルモン分泌の低下海馬におけるセロトニンの増加??海馬や視床下部におけるステロイドホルモン受容体のステロイドホルモン受容体DNAメチル化低下??ストレスによるステロイドホルモンによるステロイドホルモンの分泌フィードバックの亢進エピジェネティクス環境=育ちそれぞれが関与して、一人の人が形成されている。生後0~1週間可愛がられたラットは、ストレス耐性が強いという報告。生後0~1週間可愛がられたラットでは、DNAのメチル化が変化し、成長してからもストレスに強かった。この研究では同じゲノムを持っていても、生後情報によって「上書き」がされるということ、これもエピジェネティクスの大きな特徴。DNA05胎児の時に飢饉を経験すると冠状動脈疾患リスクが高くなるFetal origins of coronary heart disease.冠状動脈疾患の胎児期における起源出生時において低体重(胎内発育不全)の子供は、冠状動脈疾患のリスクが高くなる。Barker DJ, BMJ, 1995The Dutch Famine of 1944-1945第二次世界大戦中のオランダにおける飢饉胎生期において飢饉に暴露された場合、耐糖能の異常、肥満、冠状動脈疾患、動脈硬化傾向、高血圧、微量アルブミン尿症、統合失調症、反社会的性格、情動障害の比率が高くなる。また、小児期において飢饉を経験した場合、生殖機能の異常、早期閉経などが生じやすい。Kyle UG, Pichard C., Curr Opin Clin Nutr Metab Care, 2006胎児の時に飢饉を経験した子どもは50年、60年後にもかかわらず冠状動脈疾患のリスクが高くなるという報告。