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概要

Dental Products News 特別号

くちを守るバイオロジー天野敦雄大阪大学大学院歯学研究科長・歯学部長大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学分野教授健口の大敵は歯周病。歯周治療を成功へと導くためには、セルフケアとしてのプラークコントロールを習慣化するためのモチベーション(動機付け)が不可欠です。しかし、患者さんに適切なモチベーションを持ってもらうことは簡単ではありません。様々な患者さんへの対応が求められる臨床現場では、切実な問題です。患者さんの行動変容を促すポイント1960年頃から歯周病の原因はプラークであると考えられるようになり、完璧なブラッシング(100%磨き)を目指して、厳しい患者指導が行われるようになりました。でも本当に、全ての患者さんに100%磨きをして頂く必要があるのでしょうか。歯周病は、病原性の高いバイオフィルムによる強い炎症反応によるものと(私は非公式に“感染性歯周炎”と呼んでいます)、低病原性バイオフィルムの多量の蓄積によるマイルドな炎症反応によるもの(これは非公式に“不潔性歯周炎”と呼んでいます)に分けられます。低病原性のバイオフィルムしかもたない患者さんに100%磨きをさせることは意味がありません。バイオフィルムの病原性を見分けてからブラッシング指導をすることが大事です。歯周治療は歯科医療従事者と患者さんとの協働作業です。患者さんには「歯周病因論とセルフプラークコントロールの重要性を理解する」こと、そして「適切なブラッシングテクニックを修得し、望ましい口腔衛生習慣を身につける」ことを担当して頂きます。しかし、人はすぐには変わりません。患者さんの日常の行動変容を求めるために焦りは禁物です。いくつかのポイントをお話します。たとえば、?患者さんの望んでいるものだけを小出しに提供厳しい熱血指導は押し売りになってしまいがち。少し控えめなブラッシング指導がむしろ効果的。また、つい患者さんに言ってしまいがちな良くない言葉は避けましょう(図1)。?歯周病を科学的に平易に説明できること納得できない指導はうさん臭いだけ。合点がいくと人は変わる。患者さんに歯周病の科学を理解していただき、歯科医院との二人三脚で健口を守るように変わって頂きましょう。本講演では以下の最新の歯周病因論をお話しさせていただきました。「歯周病を科学的に平易に説明できること」が目標です。1 2歯と歯の間があれほど説明して磨けていません。お願いしたのにもっとちゃんと磨いてまだできていませんね下さいね患者さんのプライドを否定ほら、こんなに磨き残しがあるでしょう上から目線での注意患者さんの人格を否定こんな歯磨きでは歯周病がドンドン進んで歯がなくなりますよ脅しでやる気を萎えさせる患者さんとの二人三脚には●望んでいるものだけを(消極的アプローチ)●親しくなろう(話を聞く、相手を知る)●目先のゴールは低く(not修行、no頑張ろう)●病状を納得させる説明力(科学的知識)●結果を残せる技術(生物学的治療)●出来ないことは出来ない(無理はしない)合点がいくと、人は動く熱血指導は逆効果の可能性もある。言葉遣いや患者さんの性格をふまえたアプローチが必要。なぜ伝わらないのだろう?と思うことは誰でもある。合点がいくと人は動くものと思い、さまざまな情報を提供してみよう。3歯科医療のパラダイムシフト4歯周破壊へのロードマップ削る・詰めるリハビリテーション1980年病因への対応削る・詰めるリハビリテーション予防歯科2000年病因への対応削る・詰めるリハビリテーション予防歯科21世紀歯科医療歯科衛生士輝くプラーク蓄積、歯周組織抵抗性低下生活習慣(喫煙、栄養)etc.上皮バリア決壊ポケット内潰瘍面出血歯周病菌に鉄分・栄養分P. gingivalisの増殖病原性の高いプラークプラークプラーク均衡歯周組織歯周組織21世紀の歯科医療へのパラダイムシフトが求められている。歯科衛生士が輝く予防歯科の重要性は益々高まる。歯周破壊は均衡が破られた時から始まることを患者さんに説明する。02