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概要

DPN CAMBRA特集号Vol.1

01「削る・詰める」から CAMBRAR「防ぎ・守る」予防歯科へ大阪大学大学院歯学研究科 予防歯科学 教授 天野 敦雄■ 昭和の決めぜりふ昭和の頃、多くの子ども達がむし歯の洪水に?れていました。何回かの通院の後に、歯科医は子ども達に「はい治りましたよ。痛くなったらまた来て下さい。」と決めぜりふを告げていました。あの頃、う蝕は「削る・詰める」で完治する病気であり、歯科医院は痛くなったら行く所でした…今は違います。■ 予防歯科で抑え込む20世紀には、う蝕と歯周病の原因菌をバイオフィルム(プラーク、歯垢)から追い出せると考えられていました。抗生物質や殺菌剤が試されました。しかし、成功しませんでした。常在菌は追い出せなかったのです。だったら、増殖を抑え込むしかありません。21世紀の予防歯科はむし歯菌と歯周病菌を抑え込み、病原性を発揮させません。■ 何を防ぎ守るかバイオフィルムと歯・歯周組織との均衡バランスが維持されていれば、う蝕も歯周病も発症しません(図2)。バランスが崩れる理由は2つ。歯や歯周組織が弱くなること、そしてバイオフィルムの病原性が高くなることです。歯や歯周組織を強くし、バイオフィルムの病原性を低くして、均衡崩壊を防ぎバランスを守るのが予防歯科です。削って詰めてむし歯は治った! 歯周ポケットが浅くなったから歯周病は治った! 貴方はそう思っていないでしょうか。残念ながら、う蝕と歯周病の原因菌は口腔常在菌。常在菌は追い出せないのです。だから、う蝕と歯周病が完治することはありません。でも、発症させない/再発させないことはできます。それが「防ぎ・守る」予防歯科です(図1)。「削る・詰める」は手遅れの後始末です。本当の治療は「防ぎ・守る」予防歯科から始まります。図1 21世紀の歯科医療削る・詰めるから防ぎ・守るへと歯科医療の主体はシフトしている。図2 これが予防歯科予防歯科とはバイオフィルムと歯・歯周組織のバランスを維持すること。バイオフィルムの高病原化と歯・歯周組織の抵抗力低下を防ぎ、均衡バランスを守る。