ブックタイトルDental Products News239
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Dental Products News239
図3.アカゲザルに対するSARS-CoVの感染実験。唾液腺の管腔上皮細胞がSARS-CoVの初期標的細胞であることが示された(文献12より改変して引用)。厚接触者への唾液感染のリスクを低減させるという一次予防の観点で不顕性感染者の日常的口腔ケアが重要である。また、感染後の二次予防、三次予防の課題ではSARS-CoV-2と体内に常在する病原性細菌群との混合感染による重症化や死亡1-3)あるいは後遺症14)が問題になっている。COVID-19で死亡した25症例の報告では、年齢と基礎疾患(高血圧、糖尿病など)のほかに細菌感染症が患者の死を招く上で重要な役割を果たすことが報告されている15)。フランスで細菌とウイルスの混合感染が認められた26名のCOVID-19の患者から全部で32菌種の細菌が検出されている16)。その内訳を図4に示す。検出された細菌の多くは口腔に常在している細菌である。COVID-19においてインフルエンザと同様に細菌との混合感染による重症化や死亡の症例が数多く報告されており、口腔ケアがCOVID-19による重症化のリスクを下げるのに役立つ可能性があることは間違いないようである。6.口腔ケアによる誤嚥性肺炎の予防口腔ケアによって呼吸器系感染症の予防ができることは、多くの臨床家や研究者によって確かめられている。van derMaarel-Wierink CDらはこれまでの誤嚥性肺炎の研究をまとめて総説を書いている17)。その結果、毎食後の歯磨き、1日1回の義歯のクリーニング、および1週間に1回の専門的な口腔清掃が、誤嚥性肺炎の発生率を減らすための最良の介入であることが述べられている。平時において誤嚥性肺炎は高齢者の課題であったが、COVID-19では、一般の人々にとってもウイルス感染後の敗血症のリスクになると考えられる。7 .おわりに口腔ケアのアウトカムは、当初の齲蝕予防から歯周病予防へ主目的が移行し、さらに歯周病予防から誤嚥性肺炎の予防、インフルエンザの感染予防、周術期管理あるいは様々な生活習慣病の予防へと拡がってきた。COVID-19のアウトブレイクが始まり、口腔ケアのアウトカムの一つにCOVID-19の発症予防や重症化予防が加わることになった。COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は感染力と持久力が強く、都市閉鎖で長期間社会活動をストップさせるような感染防止策には限界がある。ワクチン接種と口腔ケアの推進で感染しても発症や重症化を防ぐ新しい予防歯科の視点が必要だと思われる。〈文献〉1. Cox MJ et al. Lancet Microbe. 2020 May;1(1):e11.2. Sharifipour E et al. BMC Infect Dis. 2020 Sep 1;20(1):646.3. Contou D et al. Ann Intensive Care. 2020 Sep 7;10(1):119.4. Martinez Lamas L et al. Oral Dis. 2020 Jul 2;10.1111/odi.13526.5. Meister TL et al. J Infect Dis. 2020 Sep 14;222(8):1289-1292.6. Yoon JG et al. J Korean Med Sci. 2020 May 25;35(20):e195.7. Poole S et al. J Alzheimers Dis. 2013. 36(4):665-77.8. Liu Y et al. Sci Rep. 2017. 7(1):11759.9. Dominy SS et al. Sci Adv. 2019. 5(1):eaau3333.10. Tashiro M et al. Nature. 1987 Feb 5-11;325(6104):536-7.11. Nishikawa T. et al. PLoS One. 2012;7(9):e45371.12. Liu L et al. J Virol. 2011; 85(8): 4025-30.13. Xu R et al. Int J Oral Sci. 2020; 12(1):11.14. Li Z et al. Eur J Phys Rehabil Med. 2020 Jun;56(3):339-344.15. Li X et al. Int J Infect Dis 94:128-132, 2020.16. Contou D et al. Ann Intensive Care. 2020 Sep 7;10(1):119.17. van der Maarel-Wierink CD et al. Gerodontology. 2013Mar;30(1):3-9.図4細菌との混合感染が認められたCOVID-19の患者から検出された細菌。メチシリン感受性の黄色ブドウ球菌Staphylococcusaureus(n = 10/32, 31%),インフルエンザ菌Haemophilus influenzae(n = 7/32,22%),肺炎球菌Streptococcuspneumoniae(n = 6/32,19%), Enterobacteriaceae(n = 5/32,16%),緑膿菌Pseudomonas aeruginosa(n = 2/32,6%),Moraxella catarrhalis(n = 1/32,3%)およびAcinetobacter baumannii(n = 1/32,3%)。文献16より引用。4Dental Products News 239