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概要

Dental Products News228

過去に2回修復されましたが、またもや修復物の状態が悪くなっています(図1)。彼女の上顎右側側切歯は、う蝕部位ではないものの変色が生じています。デンタルX線写真では、修復物と二次う蝕が認められます(図2)。彼女には、その他に確認できるリスクファクターはなく(図3)、そして彼女のカリスクリーンスコアは972と低値です(図4)。病巣及び修復部位に特定のパターンが認められることと他のリスクファクターの既往がないことは、LYZL2遺伝子の診断を裏付けるものです。さらに彼女の母親と話したところ、母親もまた、過去に修復治療を受けたのは下顎前歯のみであったことを確認しました。これは、まれな遺伝子状態ですが、そのう蝕のパターンは容易に特定できます。患者のDNAを変えることも、あるいは現時点で、それを確認することさえも我々にはできないため、患者に対して、疑われるこのリスクファクターについて情報を提供することと、健康な食生活と徹底したホームケアの維持を指導することが大切です。ハイドロキシアパタイト配合歯磨剤を1日2回使用することがこの患者に推奨されるプロトコルです。他に遺伝子発現の可能性が確認されているものに、AJAP1遺伝子があり、これは歯の発育に影響を及ぼします。この遺伝子多型を持つ患者は、しばしば、他のリスクファクターが全くない中でもう蝕のリスクが高くなってしまいます。エナメル質形成不全のような他の遺伝子疾患とは異なり、この臨床所見では、外見上は正常な歯にみえますが、う蝕への感受性が非常に高いのです。この場合もやはり、他のリスクファクターは認められません。患者は17歳の女性で、広範囲に及ぶう蝕の既往があります。パノラマX線写真から修復治療が広範囲に及んでいることが明らかです(図6)。彼女の元主治医は、根管治療を行い、クラウンで修復しましたが、今後、彼女はさらに4つのクラウンが必要です。彼女には、カリエスリスク評価フォームで他に確認できるリスクファクターがなく(図7)、彼女のカリスクリーンスコアも1377と低いものでした(図8)。この遺伝子の発現はLYZL2遺伝子ほど明確ではありませんが、臨床データによりAJAP1遺伝子の診断が裏付けられます。この場合も先と同様に、できる限り口腔を健康に、また、適切なバランスに保つため、他のリスクファクターを最小限にすることについて、患者を教育することが重要です。彼女に推奨される治療法として、新たな修復治療と、1日2回のハイドロキシアパタイト配合歯磨剤の使用があります。CAMBRA TMは、う蝕治療への新しい医学的手法であり、欠損の修復に加え、う蝕の原因の特定と対処に重点を置いています。既知のリスクファクターの多くは、臨床的に、その疾患を認識できるパターンで現れる一方、遺伝子の影響は、あまり明確ではなく、それを判断することはさらに困難です。さらなる遺伝子研究により、我々の理解が深まり、CAMBRA TMの全過程の一部として、この知識を臨床に応用することができるようになるでしょう。病気の原因を特定できることで、最終的に、患者は自分の健康をコントロールできるようになるということです。6 78パノラマX線写真で明らかなように、この17歳の患者には、広範囲に及ぶ修復物があります。患者の低いカリスクリーンスコア。カリスクリーン測定結果基準ローリスク0~1,500ハイリスク1,501~9,999測定結果は、0~9,999(0~1,500:ローリスク/1,501~9,999:ハイリスク)の値で表示される。患者のカリエスリスク評価フォームにより、他のリスクファクターがないことが明らかです。BALANCE患者と歯科医師のためのう蝕管理ガイドキム・クーチ著クインテッセンス出版発刊定価:2,760円Dental Products News 228 7