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概要

Dental Products News228

V. Kim Kutsch, DMDの提言を読み解く:シリーズ第4回シリーズCAMBRA TM:遺伝的性質の観点から監修:安井利一先生(明海大学学長)4う蝕は、非常に複雑なバイオフィルムの疾患であり、複数のリスクファクターがあります。CAMBRA TM、すなわちリスク評価によるう蝕管理によって、患者の疾患の主な原因であるリスクファクターを診断する歯科専門家の能力は向上しました。既知のリスクファクターには特定のパターンで現れるものがあり、唾液(唾液分泌減少)、食事(炭水化物の摂取、頻繁な間食)や細菌(高い細菌負荷や細菌構成が異常なバイオフィルム)等が挙げられます。それぞれの特定できるパターンが、CAMBRA TMの手順で明らかにされ、疾患の原因に対して治療戦略が展開されます。遺伝的性質もう蝕に大きな役割を果たしますが、その役割についての理解は不十分で、明確にされていません。近年の多くの研究によって、個人のう蝕の感受性に影響を与える遺伝子として、40もの異なる遺伝子が特定されています。また、研究者は、う蝕の30~60%が遺伝的性質だけで説明可能であると評価しています。う蝕に影響を及ぼす遺伝子は多岐にわたりますが、疑う余地のないものに、歯胚の発育、エナメル質の発育、象牙質の発育、唾液、唾液中の防御抗体、味の好みに影響を及ぼす遺伝子があります。これらは、これまでに分かっている疾患のモデルに一致するものです。しかし、他のあまり明確ではない遺伝子も、う蝕感受性に影響を与えることが示されています。これらの遺伝子は、白血球、ビタミンDの吸収、マトリクスメタロプロテアーゼ、ボディマスインデックス、骨形態形成タンパク質や他の代謝関連遺伝子といったものに影響を与えます。遺伝的性質は、患者のう蝕感受性に重要かつ多様な役割を果たすと思われます。また、一般的に、これらの特定の遺伝子の表現型は、特有のう蝕パターンとして認識できません。このテーマについて、さらに多くの研究結果が報告されることで、今後、このような遺伝的情報を臨床に利用することができるかもしれキムクーチ先生V.Kim Kutsch,DMDアメリカ開業『バランス』の著者フェザーストーン教授が提唱されたCAMBRA TMシステムを医院で実践されている第一人者ません。しかしながら、現時点では特定できるパターンを示す可能性があるのは、二つの遺伝子です。LYZL2遺伝子は、唾液中の溶菌酵素に影響を及ぼします。この遺伝子多型を持つ患者は、う蝕が下顎前歯のみに生じます。これらの6歯は、毎日2リットルの唾液に浸され、口腔内で最もう蝕抵抗性のある歯です。すでに大部分の歯を歯科疾患で失った患者では、これらの6本の前歯は、「最後の砦」です。従って、これらの前歯にのみう蝕がある患者を目にするのは、予想外のパターンであることになります。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●患者は14歳女性で、下顎切歯にのみ隣接面修復の既往が認められます。これらの歯は、134患者の下顎切歯にのみ修復物と病変が見られます。患者のカリスクリーンスコアは低く、バイオフィルムのリスクファクターが無いことが示唆されます。25既存の修復物と二次う蝕を示す前歯部デンタルX線写真。6 Dental Products News 227記入された患者のカリエスリスク評価フォームから、リスクファクターが無いことが明らかです。う蝕のバイオフィルムのリスクを測定するカリスクリーンメーターとスワブ。