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概要

Dental Products News225

術中の予期せぬ創部からの出血は、術者にとっても患者にとっても嫌なものである。ましてや近年では抜歯などの口腔外科処置に際し循環器疾患への配慮から、抗凝固薬の服用継続下で行うことを多く求められるようになった。持続的な出血に対してコラーゲンスポンジ以外の止血のための「次の一手」が欲しいのは私だけではないだろう。ヘムコンデンタルドレッシングRは2011年に日本でも発売された。当初はインプラントメーカーが発売していたが、昨年よりヨシダから広く歯科市場に売り出された。ヘムコンデンタルドレッシングRはカニ等甲殻類の外骨格に含まれるキトサン(chitosan)…(C 6H 11NO 4)nポリーβ1→4ーグルコサミンを成分としている。ヘムコンデンタルドレッシングRの作用機序は生体中の凝固線溶系因子を介さずに止血効果を発揮する。その要因は粘膜を構成する糖蛋白であるムチンにあるCOOH基を持つ陰性電荷のシアル酸である。また血小板や赤血球表面構造の中にも糖蛋白の側鎖であるシアル酸があるため、その陰性電荷である血液中の血小板、赤血球を引きつける。このキトサンの持つN H 2基の陽性電荷特性により患者の凝固系に依存することなく速やかに傷口を塞ぎ、止血効果を発揮する。その後、生体内では血液凝集反応により凝血塊(血餅)が形成され、出血面においては出血口の血餅が強化される。今回は、その臨床例を紹介する。●症例2:70歳女性1 12残根抜歯症例◎既往歴:ラクナ梗塞、脊柱管狭窄症、高血圧症、甲状腺腫、狭心症、右下顎頭骨折後陳旧化◎内服薬:バイアスピリン錠100mg図9図10図11術前デンタルX線写真。図12術前口腔内写真。残根鉗子にて抜歯。図13抜歯後、掻爬、生食にて抜歯窩洗浄後、持続性の出血を認めた。1を4-0絹糸にて縫合。12は、10×12mmヘムコンデンタルドレッシングRを半分にカットし、10×6mmに成形後、抜歯窩を封鎖。図14ヘムコンデンタルドレッシングRにて封鎖後10秒経過。1は出血が多く縫合糸が見えなくなったが12の出血は少量であることがわかる。図15術後2日目(48時間以内):抜歯窩を生食にて洗浄し残留したヘムコンデンタルドレッシングRを洗い流した。術後9日目:1抜糸を行った。ヘムコンデンタルドレッシングRの使用により縫合糸によるWick effectの心配がなく、粘膜の治癒も縫合部位より良好であるように感じた。Dental Products News 225 21