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概要:
Dental Products News220
た場合には、シーラーとしてのMTAフィラペックスに水中浸漬のような状況にはならないことも、同時に条件として加味した。すなわち、C群として、b+c練和後に120分室温に置き、2日間37℃水中浸漬硬化させて、色素液に浸漬した。D群には、b+c+精製水で練和して、後の過程はC群と同じ条件とした。さらに、E群では、b+c+精製水で練和直後、37℃水中硬化120分後に色素液に浸漬した。また、シーラー全体が水に浸ることのないように、ビニールチューブから、試料を取り出さずチューブ全体に切り込みを入れることで、この部分から水分が入り込む程度にとどめるためである。浸漬実験の結果は、C群は色素が侵入したが、D・E群においては充分な硬化体を得ることができた。以上の実験結果から、水分が多ければ良いというものではなく、追加の水分もチューブの切り込みからの水分量で硬化することが判明した。特に練和して直ぐに37℃の水中に120分間浸漬すればよいことも判った。このように、根管充填用シーラーとして、最も臨床での条件に近いE群から、MTAフィラペックスを硬化させる要素がようやく見えてきた。練和時の水分添加だけでは不足であり、さらなる水分の補給と、加えて温度環境が必要であった。つまり、MTAフィラペックスの硬化因子は「水と温度」である。このMTAフィラペックスの持つ問題点を整理すると、1ベースとキャタリストの練和のみでは硬化は不十分で、水分を添加することが不可欠である。2臨床において、根管内の水分量だけで満足な硬化が得られるか。3水分量が不足した状態では、硬化は不確実なものとなり、シーラーの目的である根管内封鎖ができない。4硬化するためには、温度環境が37℃にあることが必要である。そこで、臨床上の問題を克服するためには、ベースとキャタリストの練和に水を足すとともに、水和反応のためにさらなる水分の追加を考えることである。また、硬化させるための温度環境は、生体内のため問題とはならない。MTAフィラペックスをシーラーとして根管充填する場合には、硬化のため水和反応を進め、反応を停止させないような配慮をすることが必要である。4.MTAフィラペックス臨床応用に対しての個人的見解たい。?ベース・キャタリストの練和時に探針の先端に付く程度の量の精製水を加える(このとき、精製水の量が多すぎると極端に流動性が損なわれ、操作性が悪くなる)?根管内は洗浄後、綿栓等で吸湿・乾燥後に、再度精製水で湿らせたペーパーポイント等で根管内を拭掃し、湿潤状態にする(根管内の水分が多すぎると、シーラーがうまく入らないし気泡もできやすい)?通法による根管充填し、根管口に水を含ませた綿球を置き仮封する。?処置当日のコア形成はしない。結論は、MTAフィラペックスはやはり「MTA」ということである。先にも述べたことであるが、M T AフィラペックスはM T Aであるが故に、従来のシーラーとは異なった性質を有している。この「水和反応」というMTA特有な性質を知らないまま使うか、知ったうえで臨床に応用するかでは予後成績に違いが生じてくると思われる。MTAの持つ優れた性質を引き出し、臨床的により良好な成績を収めていくために、MTAに関しての情報を発信して行く予定である。3.MTAフィラペックスの硬化因子と臨床応用での問題点これまで示してきた硬化実験の結果、MTAフィラペックスは、これまでのシーラーのように粉・液やペースト・ペーストで練和して硬化するわけではないということである。MTAの成分に、操作性と流動性のためにレジンが添加されている製品であっても、MTA系であるが故に、水和反応のための水分が必要であって、その硬化のためには、ヨシダの注意書きにあるように、MTAフィラペックスの硬化は、他の類似製品でみられる重合反応とは異なり、水分子を要する水和反応で硬化する。臨床の場では、根管内の状態は一様ではないことを念頭において、様々な症例に対応できるMTAフィラペックスの特徴を引き出すような術式が必要と考える。これまでの実験の結果及び臨床での実際から、次にに示すような応用方法を推奨し●参考文献1)Torabinejad M, Watson T F, Pitt Ford T R , Sealing ability ofa mineral trioxide Aggregate when used as a root end fillingmaterial .J Endod 1993 ,19;591-5952)小林千尋.MTAの臨床-よりよいエンドの治癒を目指して,2013,第1版3)森川公博.MTA製材の特性-MTAを知って使おうーその1:MTAアンジェラスを硬化させる,DPN,215, 2015,12~14.4)森川公博.待望のMTA根管充填用シーラー「MTAフィラペックス(MTA Fillapex R)」DPN,211,.2015,4~5.16 Dental Products News 220