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付属の計量スプーン1杯に対し、精製水1滴を加え30秒間練和し、均一なペースト状としたものを採取量が見えるように透明なタイプのアマルガムキャリア(図4)を用いて輸送した。なお、臨床的には専用のM TAアプリケーターが用意されている(図4 右)。採取したM TAを直径5 m m深さ5mmと3mmの合成樹脂製板に填塞し、精製水を絞った綿球で被覆した部位を押さえて凝縮させた。このとき被覆面に乾燥綿球を置いたものと、精製水を湿らした綿球を置いたものを用意し、37 ℃で保管した(図5)。これを3日間72時間後に、硬化の状態を検討した。その結果、乾燥綿球を置いたものは一見硬化しているようであるが、探針で触れると、容易に崩壊した(図6)。これに対して湿綿球の下は硬化していたが深部まで至っていたかは疑問が残るものの、明らかに乾燥綿球よりは硬化していた( 図7)。従って、MTAの硬化には、練和に要した水分量のみでは不足であり、水分の補給が必要であることが判明した。しかしこの実験系では、窩底部を完全に封鎖することができない。そこで、より臨床に近い実験系としてニッシン社製根管模型を用いた。通法に従って、髄室開拡し、根管口部をラウンドバーで一層削除し、生活歯髄切断法を模した。この生切部に精製水をスポンジで満たして水分が留まるようにし、MTAアンジェラスを先の実験に準じて生活歯髄切断糊材として応用して、その硬化を確認した。実験条件は、合成樹脂製板の場合と同様に乾燥綿球を置いて仮封した群と精製水を満たした湿綿球で切断糊材部を覆った群の2群とした。これを、先の実験時の条件に準じて37℃72時間後に、硬化の様相を検討した。まず、乾燥綿球を置いて仮封した群では、表面は硬化しているようにみえるが探針で周囲を突くと容易に剥離し、硬化は不十分と捉えられた(図8)。精製水を満たした湿綿球で切断糊材部を覆った群は、同様に探針で髄床底を突いてもアンジェラスの剥離は認められず、その硬化は進行していた(図9)。従って、MTAアンジェラスを応用する際には、水和反応を進める意味からも、湿綿球のような水分の補給が必要である5)ことが再確認された。すなわち、臨床で応用するときには、従来の覆髄材のように患部に貼付後セメントで、直ちに封鎖するのではなく、湿綿球で水分を補給して水和反応を待ってからセメント裏層することが予後を良導し、失敗しないための手順であると思われる。DPN211号で紹介し6)、現在注目を集めている国内初のMTA系根管充填用シーラー「MTAフィラペックスR」も、MTAであるが故に、従来のシーラーとは異なった性質を有している。それは、MTA製材のMTAフィラペックスも硬化機序はMTAアンジェラスと同様ということである。この性質を知らないまま使うか、知ったうえで臨床に応用するかでは予後成績に違いが生じてくると思われる。誌面の都合もあり、「MT Aフィラペックス」の硬化の詳細については、次回に述べることとする。●参考文献1)2)3)4)5)6)Torabinejad M, Watson T F, Pitt Ford T R , Sealing ability ofa mineral trioxide Aggregate when used as a root end fillingmaterial .J Endod 1993 ,19;591-595Song JS, Mante F K,et al, Chemical analysis of powder andset forms of pottland Cement, gray ProRoot MTA,whiteProRoot MTA,and gray MTA- Angelus. Oral Surg Oral MedOral Pathol Oral Radiol Endod 2006,102:809~815.Santos AD, Moraes JCS,et al,Physico-chemical propertiesof MTA and a novel experimental cement. Int Endod 2 005,31;376~379 .牛窪敏博.MTAの新しい適応性.the Quintessence,2010,29;589~607.小林千尋.MTAの臨床-よりよいエンドの治癒を目指して,2013,第1版森川公博.待望のMTA根管充填用シーラー「MTAフィラペックス(MTA FillaprxR)DPN,201,.2015,4~5.不十分なMTAの硬化。硬化がみられたMTA。図8 図9