Dental Products News 特別号

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~謎解き口腔機能学~すべては口から始まった歯科岡崎好秀国立モンゴル医科大学客員教授/前岡山大学病院小児歯科講師口の中には、ふしぎが満ち溢れている。例えば離乳期の舌運動は、前後運動から上下運動に変わり、さらに左右運動が可能となる。何故この順番なのだろう?何故、下顎乳前歯から萌えるのだろう?上顎からではダメなのか。それは、何を意味しているのか?これらの“ふしぎ”を魚類からヒトへの口腔の進化を通じて、日常臨床と兼ねあわせてみたい。なぜ口唇が見えないのだろう?下口唇が内翻し見えない方の総義歯は難しい。下唇圧が強く下顎義歯に転覆力がかかるためだ。しかし、口腔ケアを行うと見えるようになった。義歯の難易度が低下したのは、どうしてだろう?さて魚類の舌は動かない。動き出すのは、両生類に進化し舌で捕食をするためである。一方、口唇は哺乳類になり哺乳時に動き出す。だから起源が古い舌の動きが優位となる。だから舌は口唇より偉いのである。さて、舌筋には起始があるが停止はない。それ故、使わないと拘縮し後ろに引かれる…と考えると下唇が見えないのは、舌が後ろに引かれているからではあるまいか。口腔ケアは、舌筋の寝たきり起こしにつながるのである(写真1・2)。12舌は乾燥し汚れ(舌苔)動かず硬く緊張している2週間後舌は柔らかくなり前に出るようになった守りの口腔ケア・攻めの口腔ケア口が乾燥し舌垢がこびりつき痛々しい高齢者の写真がある(写真3)。誤嚥性肺炎の予防のため、直ちに口腔ケアをしたくなる。さて予防には2種類の概念があると思う。一つは“守りの予防”。つまり“○○にならないように△△する”。すなわち誤嚥性肺炎の予防は、“守りの予防”である。もう一つは“攻めの予防”である。ある重度脳性まひ児。バギーに座り、常時口が開いていた。口唇を介助し閉じさせた。血中酸素飽和濃度を測ると、驚くことにSPO2の値が88から94%に上昇した(図4)。口を閉じた方が楽なのだ。通常、ヒトは鼻呼吸だが激しい運動の後では自然に口が開く。これは、体が酸素を欲しているからである。しかし、患児は口を開けている方が苦しいのである。何故だろう?口を開いて寝ると舌根沈下を起こし、気道が狭くなりイビキにつながる。さらには睡眠時無呼吸症候群の引き金ともなる。患児は、舌の力がないため口が開いただけで舌根沈下を起こしたのである。さて、冒頭(図3)の高齢者は口が開き舌根沈下を起こしている。低酸素状態のため、それを訴える力がない。本当は苦しいのではなかろうか?酸素不足のため、我々の住む世界に戻って来ることができないのではなかろうか?口腔ケアで舌の寝たきり起こしをすると呼吸が楽になる。これは、“攻めの予防”と言える。16