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るだけ為害性の少ない材料で封鎖し、漏洩を最小限にすることである。MTAセメントは、これらの用件を満たすために数多くの特性を備えている非常に優れた覆髄材である。露髄面に為害性を与えること無く、確実に封鎖し、水酸化カルシウムの徐放により、硬組織(デンティンブリッジ)を誘導する。また、その高い封鎖性は、従来抜髄に移行していたような露髄面も、確実に封鎖することが可能となった。MTAセメントの出現により、歯髄保存の基準は大きな変換期を迎えたと言っても過言ではないだろう。実際の臨床症例のポイントを、順を追って説明したい。まず歯髄保存処置を行うことが妥当であるか、患歯の状態について十分な診査を行う。術中、直接覆髄を行うことが予想される深いカリエス処置を行う際は、事前にラバーダム防湿を行い、予め術中の感染の制御を行う。露髄が予想される際、軟化象牙質除去は窩洞の周囲からおこなう。周囲から軟化象牙質を除去していくことで、露髄した時に露髄面に切削片を押し込むリスクが低下する。軟化象牙質を大まかに除去するには、スチールラウンドバーなどが適しているが、歯髄に近接してきたら手用のラウンドタイプエキスカベーターなどに換えて慎重に除去を行う。カリエスを除去し露髄した場合、覆髄する前に必ず露髄面をよく観察する。露髄面に削片などの感染物が入ったままにしないように、ラウンドエキスカベーターなどの尖端の小さい器具を用いて、出血させないよう丁寧に除去を行う。露髄部に出血がある場合は生理食塩水でよく洗い、止血を待つ。止血を確認した所でMTAセメントにて覆髄する。MTAセメントは、その混水比により操作性が大きく変わる。水分は練和板上でガーゼやペーパポイントなどを用いることで、簡便に調整ができる。貼付する際は、キャリアなどを利用し露髄面にピンポイントに置き、露髄面を押さないようソフトに圧接していく。露髄面よりも少し広めに隙間無く置いていく。その後、コンポジットレジンもしくは、グラスアイオノマーセメントなどの強度のある材料で封鎖を行い、リーケージを最小限にすることが重要である。今回発売されるMTAアンジェラスは、初期硬化時間が15分と他のMTAセメントよりも速くなっており、スピーディな操作が要求される歯髄保存処置において非常に操作しやすいMTAセメントである。MTAセメントの開発により、筆者らの歯髄保存の基準、いわゆる抜髄のカットオフ値というものが大きく変わった。いままで諦めていたような深いカリエスでも、慎重に軟化象牙質を除去し、MTAセメントで緊密に封鎖を行うことで、保存が可能となる症例が多くなった。天然の歯髄を保存することは、患者本人にとっても非常に価値のあることである。ぜひ、今後の臨床に取り入れて頂きたい。臨床におけるポイント歯髄保存の可能性が大きく変わる図14図12 近心側の軟化象牙質についても除去し、ポーセレンイン ポーセレンインレーセット時のデンタルX線写真レーの形成を行った。図13 ポーセレンインレーセット時図15・16修復処置後1年経過。図17 術後一年経過のデンタルX線写真 臨床症状は無く、電気的歯髄診では陽性反応を示している。図9 術後約3ヶ月の口腔内写真。臨床症状なく安定している。図10 グラスアイオノマーセメントを除去し、リエントリーを行った。中心部の露髄面に適用されたMTAセメントは残し、再度軟化象牙質除去を徹底的に行う。図11 コンポジットレジンにより最終的な封鎖を行う。