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MTAセメントによる歯髄保存辺見 浩一 岡口 守雄 岡口歯科クリニック?東京都千代田区開業覆髄材・MTA総論Mineral trioxide aggregate (以下MTA)セメントは、1990年代初頭、米国ロマリンダ大学のTrabinejad教授らにより開発され、90年代後半には製品化、臨床応用されるようになった。当初米国では、逆根管充填材として開発されたが、その高い生体親和性、封鎖性、硬組織誘導能が広く知られるようになると、根管や髄床底の穿孔部封鎖、覆髄など、歯内療法における様々な用途に応用されるようになった。歯内療法は、様々な技術革新により歯牙の保存の可能性を広げてきた分野であるが、MTAセメントの開発により、従来保存困難だと思われていたケースでも、保存することが可能になり、その開発による恩恵は計り知れないものがある。本邦では、2007年4月に薬事承認され「覆髄材料」として歯髄保存の場面で応用することが可能となった。直接覆髄などのケースでは従来水酸化カルシウムが多く使われていたが、それに変わる材料として注目されている。本稿ではMTAセメントにおける覆髄剤としての応用について臨床症例を交えながら解説したい。MTAセメントの主成分は、いわゆる工業用のセメントであるポルトランドセメントであり、そこに造影剤として酸化ビスマスが添加されている。ポルトランドセメントの硬化機序は水和反応であり、硬化には持続的な水分の供給を必要とする。硬化したMTAセメントは、pH12程度で維持され、この強アルカリにより抗菌作用をもつ。また、硬化体から水酸化カルシウムイオンを持続的に溶出する「水酸化カルシウム徐放性」を持ち、被着面の硬組織形成を誘導する。また、硬化時にやや膨張することで高い辺縁封鎖性を持つ。さらに、生体に対して非常に為害性が少ないことも多くの研究で明らかにされている。歯髄保存処置において、露髄を起こした直接覆髄の最大のポイントは、露髄面をできMTAセメントとはMTAセメントの特性図4 窩洞辺縁から軟化象牙質を除去し、中心部を手用のラウンドエキスカで慎重に除去したところ露髄した。図5 露髄面に削片が残っていないことを確認し、MTAセメントを、キャリアを使用し置いていく。図7 グラスアイオノマーセメントで仮封を行った。図8 直接覆髄直後のデンタルX線写真図1 覆髄材・MTAアンジェラス。図2  4 術前口腔内写真。図3 術前デンタルX線写真。 4 遠心に歯髄に近接した深いカリエスが確認できる。電気的歯髄診では、陽性反応を示した。初期硬化時間 15分圧縮強度(初期) 44.2MPa   ( 21日後) 67.0MPa膨張率     0.3%ph(3時間後)  12.5MTAアンジェラスの物性図6 露髄面を刺激しないよう、そっと圧接していく。